品質管理技術 第7話 工程のFMEA  担当 津守正己

2015年04月13日

■ 「工程のFMEA(Failure Mode and Effect Analysis:故障モードとその影響の解析)」 との出会い

 もう随分と昔の話ですが、私が生産技術部門に籍を置いていた頃、会社が東大の先生を招いて「工程のFMEA」 入門という聞き慣れない勉強会が計画され数人の生徒が選抜されました。その中に生産技術代表として私の名前がありました。他は設計など技術部門の方でした。

  私は過去に品質保証部門の経験もあって「FTA」「FMEA」という言葉だけは知っていて車両等の故障解析に使うツールと認識していましたので「工程の FMEA」に少なからず興味があり又、東大の先生と話が出来るなんて夢のようで若さもあってかやる気満々で参加しました。

 

■ 「工程のFMEA」を必要とした背景

 生産技術は大きくユニット関係と車両関係に分かれます。その中で私は車両生産技術・品質保証を経験し、車の5大不具合 「走る・曲がる・止まる・車両火災・急発進」の基本品質は身につけていたつもりです。

 ちなみに車両組立ラインで1台に組付けられる部品は約千点。それを「第1工程ではこの部品を、第2工程ではこの作業を・・・」と工程計画し、ほぼ全作業を人の手で最終完成車両に仕上げるのです。

 当時私の主業務はモデルチェンジの度に追加される新機構・新機能および増々厳しくなる要求品質を量産までに確立する事、図面・試作段階から検討に入り、改善提案する件数は1車種で数千件に及ぶこともありました。

 そこでテーマを「次期開発車で採用予定の新材料・新工法」に決めて勉強会に参加しました。

 

■ 展開のプロセスとその後の進化

 「工程のFMEA」では先程の新型車生産準備(図面検討)段階で工程・設備計画し、組立作業を要素作業単位に分解し、その作業毎に予想される不具合(不良モード)を徹底して摘出します。

 ここで一番大事な仕事は過去トラ(過去に類似した構造・設備で経験した失敗例)を全て網羅する事です。ですから、かなりの経験が無ければ図面を見て発生するであろう不良モードの摘出は困難です。

  不良モードが出揃うと後は、モード毎に発生頻度・発見の難易度・ダメージから重要度をつけて重要度の大きい順に設計変更・設備計画変更等で事前に対策の手 を打ちます。どうしても対策出来ず人の手に頼らざるを得ない場合もありますが、その場合には作業環境改善や作業訓練で対応します。

 勉強会を終えて先生方・社長の前で発表会がありました。私は先生に「工程のFMEA」を理解し使いこなせたと評価されましたが、他の方はQC手法による不具合対策と大差無しとの厳しい評価も・・・。

 ここで学んだ「工程のFMEA」をベースにし、その後車両組立工程のみならず鋳造・鍛造工程にまで「工程の保証度評価法」というかたちに進化させ展開し、若者も育ちました。

 

 皆様方も問題が発生してから行動するのでは無く、事前に予知して行動するクセを養いましょう。

 

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